OSPF 概要

OSPF 概要

■OSPFの特徴は次の通りです。■

SPFツリーによりルーティングループが起こりにくい(バーチャルリンクの場合は除く)
・トリガアップデートによる高速なコンバージェンス
・メトリックとして帯域幅を基本としたコストを使う
・Helloを使ったネイバーの生存確認による障害の高速な検出
・認証機能を持つ
・エリアを使った階層ルーティングによる効率化
・エリア境界ルータ(ABR)やAS境界ルータ(ASBR)上で、手動で経路集約を行える。
・通知する経路情報にサブネットマスクを含められるクラスレスルーティングプロトコル
マルチキャストでルートの伝搬を行う。

 

■DR BDR
OSPFのルータをマルチアクセスタイプ)のネットワークで接続した際には、DR(Designated Router)とBDR(Backup Designated Router)を選出することでLSAのネイバー数を減らし、ルータの負荷軽減を図ります。DRとBDRに選出されなかったルータはDROTHERになります。DR/BDRを選出しない構成の場合ネイバー数が多くなります。

 

■OSPFで使われるパケット■
・Hello ・・・ ネイバーと隣接関係を結ぶために使う。また生存確認にも使う
・DBD(Database Description) ・・・ データベースのやり取りに使う
・LSR(LinkState Request) ・・・ アドバタイズの送信要求に使う
・LSU(LinkState Update) ・・・ LSAをまとめたもの。リンクステート情報を渡す
・LSAck(LinkState Acknowledgement) ・・・ LSUやDBDを受け取ったことを示す

 

■OSPFネットワークタイプ■

broadcast ・・・ イーサネットLANのようにセグメント上に2台以上のルータが接続できるため、DR/BDRの選出が行われます。隣接関係は自動で行われます。

NBMA ・・・ ブロードキャストの使えないマルチアクセスネットワーク。隣接関係は手動で行う必要があります。

ポイントツーポイント ・・・ 1対1接続。DR BDRの選出なし

 

■OSPFエリアタイプ■

OSPFは大規模なネットワークで使用できます。ですが,あまりルータやネットワーク数が多くなりすぎると,トポロジデータベースが増大し,SPFツリーの計算時間がかかるようになってしまいます。そのため,OSPFではネットワークを分割する「エリア」という概念を使用します。エリアが1つの場合を「シングルエリアOSPF」と呼ばれます。複数のエリアを使う場合は「マルチエリアOSPF」と呼ばれます。
 マルチエリアOSPFでは,ネットワークを複数のエリアに分割します。エリア内はそれぞれシングルエリアOSPFで動作し,ネットワークの情報をアドバタイズします。ただし,エリアをまたぐ情報のアドバタイズは,エリアの境界にあるルータ(ABR)が集約してアドバタイズします。

 

■エリアの種類■
バックボーンエリア

 複数のエリアでOSPFを動かす場合、必ずバックボーンエリアが必要です。ほかのエリアはバックボーンエリアに物理的に接続している必要があります。エリア間のトラフィックは必ずバックボーンエリアを通過します。バックボーンエリアのエリア番号は0と決まっています。LSAタイプ1~5が転送されます。

 

●標準エリア

 バックボーンエリアではない通常のエリアです。LSAタイプ1~5が転送されます。

 

●スタブエリア

 標準エリアをスタブエリアとして構成できます。スタブエリアは、非OSPFドメインのネットワークアドレス情報を伝えるLSAタイプ5が転送されません。非OSPFドメインのネットワークアドレス情報はABRによりLSAタイプ3で、デフォルトルートが伝えられます。ASBRは配置することはできません。LSAタイプ1、2、3が転送されます。

 

●トータリースタブエリア

 スタブエリアよりも、さらにエリア内に転送されるLSAを減少できます。LSAタイプ5が転送されないのに加えて、ほかのエリアのネットワークアドレス情報を伝えるLSAタイプ3は個別に転送されず、ABRによりデフォルトルートが伝えられます。デフォルトルートはLSAタイプ3で転送されます。ASBRは配置することはできません。LSAタイプ1~3が転送されます。

 

●NSSA(Not-So-Stubbyエリア)

 NSSAはASBRを配置できるスタブエリアです。非OSPFドメインのネットワークアドレス情報はABRによりLSAタイプ3で、デフォルトルートが伝えられます。NSSA内のASBRは、非OSPFドメインのネットワークアドレス情報をタイプ7LSAでNSSA内にフラッディングします。タイプ7LSAはNSSA内だけにフラッディングされるので、NSSA内のABRは、タイプ7LSAをタイプ5LSAに変換して、バックボーンエリアに転送します。

 ただし、デフォルトルートは自動的にアドバタイズされないので、明示的に設定する必要があります。LSAタイプ1~3、7が転送されます。

 

●トータリーNSSA

 ASBRを配置できるトータリースタブエリアです。ほかのエリアのネットワークアドレス情報は個別に伝えられず、ABRによりデフォルトルートが伝えられます。デフォルトルートは自動的にアドバタイズされます。

 NSSAと同様、タイプ7LSAが転送されます。NSSA内のABRは、タイプ7LSAをタイプ5LSAに変換して、バックボーンエリアに転送します。LSAタイプ1~3、7が転送されます。

 

■ルータの種類■
内部ルータ ・・・ 全てのインターフェースを同じエリアに接続しているルータ。

ABR ・・・ 複数のエリアを接続させるルータ。複数のエリアの情報を持ち,ルートの集約などを行う。


ASBR ・・・ OSPF以外のルーティングプロトコルのネットワークとの境界にあるルータ

バックボーンルータ ・・・ バックボーンエリアに存在するルータ

 

■LSAの種類

 


その他の機能
■パッシブインターフェイス

OSPFでは、OSPFを有効にしたインターフェイスの情報がLSAで送信されます。またそのインターフェイスからHelloパケットが定期的に送信されます。
しかしネイバーやアジャセンシーの関係を築くルータが存在しないインターフェイスからHelloパケットを送信する意味はありません。
かといってOSPFを有効にしなければ、LSAでそのインターフェイスの情報がアドバタイズされません。そこで、OSPFは有効にするがHelloパケットを送信しないようにすることができます。それがパッシブインターフェイスです。パッシブインターフェイスの設定を行うと、Helloパケットを送信しなくなります。また受信したHelloパケットも無視するようになります。結果、ネイバーとして認識されなくなります。ネイバー関係を築くルータが接続していないインターフェイスに設定することで、無駄なHelloパケットの送信を止め、ルータの負荷を下げることができます。

 

■MTUのサイズ■

MTU(Maximum Transmission Unit)とは1回の通信で送信することのできるパケットの最大サイズのことです。
OSPFでネイバーとやり取りする際に、ネイバーのインターフェイスのMTUと自身のインターフェイスのMTUのサイズが異なると、
アジャセンシーを築くことができません。自身のMTUのサイズよりも大きいDBDのパケットを受け取った場合、そのDBDを無視してしまうからです。
その結果、ネイバーとの状態がExstartもしくはExchange ステートから先に進まなくなります。

この問題を解決するには、対向のルータとMTUのサイズを合わせる、もしくはMTUの不一致を検出する機能を無効にします。


■OSPFの認証機能■
OSPFのみならずEIGRPやBGPにもある機能ですが、認証の設定(パスワードの設定)を行うことで、
パスワードが一致したルータ間でのみネイバー関係を築くことができます。
認証の設定を行うことで想定しないルータがネイバー関係になることを防ぎ、ネットワークを保護することができます。