ネットワーク移行計画

ネットワーク移行計画

1 一括移行
ある時点で現行システムを休止し,新システムへ一斉に切り替える方式です。週末や連休などを利用して新旧システムの機材の入れ替えを行います。

・ 適するシーン:長時間のシステム停止が可能で、コストを抑えたい場合に適した方法です。

・ メリット:一度に全て移行するため、コストが抑えられるだけでなく、時間と手間も少なくて済みます。また、現行システムはそのまま残るので、失敗した場合にすぐに元のシステムで業務を再開できます。

・ デメリット:一度に全てを移行するため、移行作業のためにシステムの停止時間が十分に必要です。場合によっては移行に長時間を要します。また、移行後にトラブルが発生するリスクが高く、旧システムへ戻さざるを得ない場合のコストも大きくなります。

 

2 段階的移行
現行システムから部分的に新システムに移行していく方法です。業務や機能、拠点などで分割し、その単位ごとに現行システムを休止し、順次新システムに切り替えます。機能単位で移行する場合、現行システムで稼働する機能と、新システムで稼働する機能が混在するため,移行過程では両システムの連携が必須となります。

 

・ 適するシーン:長期間システムを停止させることができない場合や、移行するデータの量や種類が多く一括での移行が難しい場合、大規模システムの移行で一括移行方式のリスクを避けたい場合などに適しています。システム移行のリスクとコストのバランスを取りたい企業に選ばれる方式と言えます。

 

・ メリット:一括移行よりも切り替えの単位が小さいため、数時間から1日程度の短いシステム停止を繰り返せば移行でき、コストとエラーが発生するリスクを抑えることができます。

 

・ デメリット:現在使用しているシステムから新しいシステムへ、複数回に分けて部分的に切り替えるため、一括移行に比べると移行のコストが比較的高くなるほか、手間と時間もかかります。また失敗した場合の回復が難しいというリスクがあります。

 

3. 並行運用
新システムをスタートさせたあとも、しばらく現行システムと新システムを同時並行で稼働させながら,新システムに問題がないとわかった時点で現行システムを停止する方式です。

 

・ 適するシーン::システムを止められない場合は並行移行方式が適しています。移行作業を確実に行い、本番稼働を成功させるためには、現行システムと新システムを同時に運用する並行稼働期間として数ヶ月の期間を取るのが理想的と言われており、リソースに余裕があってリスクを最小限に抑えたい場合におススメの方法です。

 

・ メリット:並行運用により、新システムで問題が発生しても旧システムは稼働し続けるため、業務への影響を最小限に抑えることができます。一括移行や段階的移行と比較して、最もリスクの少ない移行方法と言えるでしょう。

 

・ デメリット:失敗した場合の回復が難しいというリスクもあります。
 
 
 移行の方針や方式から
移行計画書に記述すべき項目としては六つを挙げられます。「1 移行概要」「2 移行対象」「3 移行中の影響」「4 移行テスト」「5 移行スケジュール」「6 移行体制」


1 移行概要

 移行の前提となる制約条件を要件として洗い出し,移行の全体的な方針や方式,業務への影響などを記述します。

2 移行対象

 現行システムから新システムに移行する対象物を明記します。対象物ごとの移行方法も,できるだけ具体的に記述します

3 移行中の影響

 移行期間中にシステムや業務にどんな影響があり,それをどう吸収・調整するのかを具体的に記述します。

4 移行テスト

 移行テストの方法,実施範囲,実施環境などを明確に記載します。

5 移行スケジュール

 WBSを洗い出し,作業期間を見積もって記述します。作業を前倒ししたり,作業が遅延したりした場合の影響を見極めやすくするため,タスクの開始条件やタスク間の依存関係も明記しておく必要があります。

6 移行体制

役割分担を記述する。

 誰が見ても理解できる記述に
 移行計画書を作るうえで留意したいのは,できるだけ分かりやすく記述することです。業務担当者でも移行の流れを理解でき,当事者意識を持って移行に協力してもらえるよう記述を心がけます。

 

例えば「1.4 移行フェーズごとのシステム状態」の記述では,概要構成図を使って移行全体の流れをビジュアルに示します。


移行計画書のチェックリスト(必要なものだけ抜粋)

■移行概要■
移行日と移行要件は明確か?
移行要件に適した移行方式(一括移行・段階移行・並行運用)が選択されているか?
移行の流れが分かりやすく記されているか?
移行失敗による影響範囲は明らかか?
移行失敗に伴う切り戻しの方針は記されているか?

 

■移行対象■
移行する対象(データ・ネットワーク・クライアント・施設)は明らかか?
現行システムと新システムの対応関係・は明確か?

 

■移行中(前後処理を含む)の影響■
移行中のシステム形態・運用への影響は明確か?
移行中に対外システムへ与える影響は記述されているか?

 

■移行スケジュール■
移行手順書の作成期間は見込んであるか?
分かる範囲で移行の詳細手順が明記されているか?
分かる範囲で移行の作業時間が見積もられているか?

■移行体制■
役割分担は明確で,指揮系統など統制のルールまで固めてあるか?
正常時だけでなく,トラブル時の体制を含んでいるか?

 

■その他■
最初の移行計画書は詳細設計前に作成したか?
新システムの設計の進展に伴い移行計画書を詳細化したか?
移行計画書を構成管理の対象にしているか?
業務担当者が読んでも理解できる記述レベルか?
現行システムと新システムの両仕様に詳しい人のレビューを受けたか?